第4章 …ねぇ。もしかして、泣いてる?
「お前!先に行くなら行くって言えよ!」
『まだ寝てるかと思いまして』
「昨日いくらでも言うタイミングあっただろ!」
到着したバンから、スタッフと共に荷物を運び出す。
そしてなにやら楽はお怒りだ。
『楽屋へ案内します』
スタッフ達に、残りの荷物をお願いして 私は彼らと共に楽屋へと向かう。
廊下を足早に歩きながら、手元の資料を見る。そして背中で彼らに説明する。
『リハの前に、スポンサーへの挨拶に同行願えますか』
返事が聞こえてくる前に、前方から別の声が聞こえてきた。
「お!中崎ちゃーん!」
すぐに相手の顔を確認してから、声と顔を作る。
『畑中さん!おはようございまーす!』
「こないだはありがとね!楽しかったよ!でも君可愛い女の子、みーんな持ってっちゃうんだもんなぁ…。よ!この色男!」
『ははっ、何言ってるんですか!畑中さんが気付いてなかっただけで、カナちゃんチラチラ畑中さんの事見てましたよ?』
「まぢ!?カナちゃん俺の本命だった子じゃん!やりー!」
ちなみに…この頭の軽そうな男は、ある有名歌番組のプロデューサーだ。
このブラホワ開催にも、勿論一枚噛んでいる。
「お、TRIGGERか…今日は頑張って!」
「ありがとうございます」
リーダーである楽が代表して頭を下げる。
「みんな男前だねぇ。どう今度?良い店連れて行ってあげるよー?」
『あはは、彼らはアイドルですよ?スキャンダルは勘弁して下さい!だから 良い店、は無理です。その代わり、私で良ければいつでも喜んでお伴しますから!』
「お!言ったね?じゃあまた近々携帯鳴らすから、よろしく!」
『絶対ですよ?社交辞令は無しですからね!待ってますから!』
男が去ってから、異様に長い沈黙が続く。
「「「……誰!?」」」
『彼は畑中さんです』聞いてなかったんですか
「ち、違うってば!そうじゃなくて、えぇーと…君があまりにもいつもと違うから…!」
『…………』にぱ
私は、真顔から先ほどの笑顔に切り替える。
「そうそれだよ!その変わり身の早さ!お前、人変わりすぎだろ!」
『…これも、仕事ですから』
「プロデューサーって、大変な仕事なんだね」でも頼もしいよ
素直な天の褒め言葉を受けながら、私は再び廊下を行くのだった。