第65章 月みたいな人
※
ベットの上へ ふわりと下されれば、すぐにまた唇が塞がれた。
ゆっくりと舌先で歯列を破られて、そのまま口中を愛撫される。
『…っん』
「………は、…」
2人の、すっかり上がった息遣いだけが、静かな部屋に響いている。
彼の手がするりと胸元に下りて、シャツのボタンを片手で器用に外していく。
綺麗な形をした指が…乳房に触れた。
『っぁ…』
天は、空いた方の手で私の頬を包み込む。そして、じっと瞳を覗き込んで来た。
『…な、なに』
「キミの、そういう顔。やっぱり良いなと思って」
『なっ、なんっ』
胸にあてがわれていた手が、再びやわやわと動かされる。堪らず私は、また眉間に皺を寄せる。
感じている顔をまじまじと観察され、快感を与えられるのだ。
「いつもキミは、澄ました顔ばかりしているから。乱れた表情が見られて嬉しい。
ねぇ、もっと見せてよ」
きゅっと、最も敏感な先端が摘まれる。私の嬌声に、乱れた表情に、天は口端を上げた。
天はきっと、こういう行為に慣れていない。いざとなれば私がリードを。
なんて、いらぬ考えだったと思い知らされる。まさかこんなふうに翻弄されるだなんて。予想していなかった。