第54章 もう全部諦めて、僕に抱かれろよ
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自分の奥から、熱くてドロリとしたものが出たのが分かる。そこは、早く千に触れて欲しくて泣いているのだ。
「は…駄目だな、やっぱり」
『え?…はぁっ、な、に?』
「君を前にすると、どうにも我慢が 利かなくなるんだ。もっと時間をかけて、焦らして、可愛がってあげたいのにね。
もう…触りたくて、堪らない」
より深い皺を眉間に刻んだ千は、中指を私の中に突き立てた。ぬるついた肉は、いとも簡単に指を咥え込んだ。
『あっ…!!やっぁ、千…っ』
「っ…温かい、な…エリちゃんの中は…」
1本の指で、私の中の感触を楽しんだ後は、さらに指を増やす。部屋に響く、くちゅくちゅという粘度を含んだ水音が、さらに大きなものになる。
「嬉しい。君も、ずっと 触って欲し、かった?」
激しく中を掻き回しながら、途切れ途切れに言う。
『っふ、ぅ あ!なんっで、んん——!』
「だって、ほら…こんなに、濡れてるから…」
ずるりと指を抜き去る。千は、そのいやらしく てらてら光った指を私に見せつけた。
『っ、…ん、触って、欲しかったし…!もっと、触って、欲しい の、千…!もっと、触って。お願…っ』
「…ごめんね、そのおねだりは、凄く可愛いんだけど…
もう、指で触るだけじゃ、僕が満足出来ないんだ」
熱っぽい吐息を漏らしながら、千は余裕のない顔で私を見下ろした。
そして、ばさっと自らの着物を脱ぎ捨てた。
涙で歪んだ視界で、私はそれを見上げていた。
月明かりに照らされて、青白く光っているみたいな彼は…ぞくっとするくらいに 美しかった。