第1章 花信風 滝澤 /平子
視線を逸らそうと思うのに、なんだか逸らせなくて丈さんの胸に抱かれたまま見つめ合う。
「…」
「丈さん…?」
「あ、悪い」
絡まり合っていた瞳はパッと離れ、また2人で歩き出す。
ドキドキしてる。
この感情は、なんだろう。。
支えてくれている腰の手も意識してしまう。
私、絶対顔真っ赤だ…恥ずかしい。
もう、私の家だ。
もう、ってなんか残念がってるみたい。
変なの。
部屋の前まで送ってくれた丈さん。
「…ここです、」
「そうか」
なんだか、名残惜しい…
「…あ、の、良かったらお茶でも…」
この時間にお茶誘う女子…完全におかしい…。私の口誰か止めて…。
丈さんが断るよね…
「……じゃあ、1杯頂く」
丈さんも、私も絶対おかしい…。
何故かちょっと他人行儀になりながら、部屋へ上げる。
政道さん以外誰も部屋へあげたことはない。
部屋散らかってないよね、ちょっと確認。
大丈夫そう。
ソファに丈さんを案内して、背広を預かる。
ハンガーにかけてシワを伸ばす。
…って、なんか普通にしたけどやっぱりおかしい気がする。
急須に茶葉を入れて、お湯を注ぐ。
湯呑みと一緒に持っていき、
「どうぞ」
と、湯呑みにお茶を注いで出したところでお互いに目が合う。
「悪いな」
「いえ、」
丈さんの足元に座ってみる。
丈さんはぽんっと私の頭に手を優しく置いた。
「寝るまで見ててやろうか?」
「…丈さん、子供扱いしてますよね?」
「1人じゃ寝れないんだろ?」
「…そうですけど、」
「寝れる時に寝た方がいいだろ」
「…丈さんは寝ないの?」
「…」
「丈さんも一緒に寝たらいいんじゃないですか?」
「…本気で言ってるのか?」
「…だって、丈さんも寝ないと…」
お互いにお互いの顔を見る。
2人共真剣な顔してる。
「わかった、じゃあそうするか」
「はい、丈さんお風呂入ってください」
「別にいい」
「汚いまま私のベッド入る気ですか?」
「…わかった」