第22章 愛ゆえの我儘
戦争の気配が色濃くなっていた。
暁の活動が活発化し、各国をおびやかしていた。
わたしは、孤児院の仕事と並行して、たまに忍として任務をこなすようになっていた。
「すまんな、サク。
孤児院のほうも忙しいんだろう」
火影室で任務の司令書を受け取りながら、わたしは申し訳なさそうな5代目に笑いかける。
「いえ、孤児院は制度もだいぶ浸透して、わたしがいなくても、ちゃんと回っていますから。
それに、里の危機に、じっとなんてしていられません。」
「そうか、助かる。
……ん?」
くいっと笑みを浮かべた5代目が、何かに気づいたように、急に椅子から立ち上がる。
「……?なにか?」
ツカツカと歩み寄った5代目がわたしのお腹に触れる。
「サク、お前、前に生理が来たのはいつだ?」
「せい…り?」
任務の話とあまりにもかけ離れた会話に一瞬頭がついてこない。
あれ?そういえば前に生理が来たのっていつだっけ?
少し遅れているな、と思ったが、不順なのはよくあることだし、特に気にも止めなくて……。
それからどのくらいたった?
「え、と。
いつだっけ……?」
間抜けなわたしの答えに、5代目が「はーぁ」と盛大にため息をついた。
「ちょっと来い。
ここでは調べられん」
「え?わっ!
どこに行くんですか??」
ぐい、と腕を引かれ、火影室から連れ出される。
外に出たところで、報告書を持って来たであろうカカシとばったり会う。
「あ、5代目、とサク?」
「あ、カカシ!」
5代目に腕を捕まれて連れて行かれるわたしを、カカシが目を丸くして見つめる。
「カカシ、すぐ戻るから……、
いや、お前も一緒に来い!」
ズカズカと足を止めることなく5代目は歩き続ける。
その顔がなぜか怒っていて、怖い。
カカシも訳がわからないという顔で、それでも歩調を緩めない5代目についていく。
「あの、5代目、いったいどこに?」
「病院だ!」
病院!?
わたし、どこか悪いの??
確かに無茶してたけど、最近は気をつけていたし、ピンピンしてるのに……
「サクはどこか悪いんですか?」
カカシが顔面に色をなくしているわたしの代わりに5代目に聞いてくれる。
「来ればわかることだ!」
一喝されて二の句が告げれずに、わたしたちは病院へ早足で向かった。