第16章 サスケ
夜、アパートの屋根の上に登って霞んで頼りない月を見上げる。
どうしたらよかったんだろ…。
袋を払った手の小ささ。
寂しげな、怒りに燃えた瞳。
やっぱり、なんかほっとけない…。
ふー、とため息をついた時、ザッと隣に影が降り立つ。
「ただいま。」
「先輩、お帰りなさい。
お疲れ様です。」
愛しい顔に自然と顔がほころぶ。
先輩はわたしの横にストン、と腰を下ろす。
触れた肩が温かくて心が溶けていく。
「で、何があったの?」
「え?なんで…?」
「サクが屋根で空見てる時は、なんかあったときでしょ。」
マスクごしに優しく先輩が笑う。
わたしはこの顔に弱い。
いつだってカッコ悪くても、すべて曝け出したくなってしまう。
わたしは昼間のことをかいつまんで先輩に話した。
「尊敬できるところを見せてあげたらいいんじゃない?」
「尊敬できるところ…?」
先輩が頷く。
「イタチのヤツ、忙しくて弟にあまり修行に付き合ってやれないってこぼしてたことがあったから、修行つけてやるとか?」
「なるほど!」
「で、うちはと言えば…?」
「あ、豪火球の術!?」
「ん、正解。」
そっか!火遁はわたしの得意分野だ。
忍術ならわたしでも教えてあげることができる。
「先輩!ありがとうございます!
今度やってみます!」
「ん。」
曖昧に返事をした先輩が、わたしの肩に頭をコテンと倒す。
銀色の髪がチクチクとほおを刺してくすぐったくて首をすくめる。
「妬けるね、どうも。」
「え?」
やける?
なんのことかわからなくて先輩を見ると、上目遣いの先輩が口布をずらしわたしの唇をさらう。
「んっ…。」
軽く触れた唇はすぐに離れてしまう。
グレーの瞳がわたしを至近距離でじっと見上げる。
「サクが、他のやつに夢中になってるから。」
「っ!!」
ヤキモチってこと!?
先輩のこういうとこ、ダメだ。
いつもクールなのに、意外とヤキモチ焼きだったりするとこ、ずるい。
大好き…。
熱くなる頬を自覚しながら、口布が下げられたままの形のいい唇にキスをする。
「まだ、小さい子供ですよ…?」
「子供だってオトコでしょ?」
「そうですけど…。」
クスクス笑っていると先輩の大きな手が頭の後ろに回ってきてくっと引き寄せられる。