第100章 仮面の男と新たな仲間
「突風!」
焦りはミスを生む。
普段なら考えて当然の思考も、どこかに飛んでいってしまう。
海流は大きな力だ。その力に抗おうとすれば、当然水琴の風も強く吹く。
異なる方向へかかる二つの大きな力。
その力がぶつかり合う一点にどれだけ負荷がかかるか、この時水琴の頭からはすっぽりと抜け落ちていた。
つまり、どういうことかというと。
バキィ!!
「「 あ 」」
水琴の風がとどめとばかりに、マストは大きな音を立てへし折れた。
***
「見事に折れたな」
「すみません……」
あれからどうにかこうにか近くの島に辿り着き__いや、漂着し。
打ち上げられた砂浜で自身の船を見上げるエースを前に、水琴はしゅんと項垂れていた。
船は酷い有様だった。
マストが折れただけではなく、帆もボロボロ。
船縁には穴が開き、舵は折れ、見た目は幽霊船のようだった。
転覆しなかったのが奇跡だ。
「気にすんな。ちょっとガタも来てたししょうがねェよ」
いえ私がお昼ご飯のこと考えてたからです。
とは言い出せず、さっさと修理して出ようぜと笑うエースに罪悪感を抱えつつ水琴は手を空へ向けた。
水琴の周りを風が躍る。緩やかな風は水琴の周りを一通り駆け巡ると森の方へと飛んでいった。