第87章 消えない絆
目の前でわいわいと騒ぐ“三兄弟”を、水琴は優しく見つめる。
空を見上げる。いつの間にか日は完全に沈み夜空には眩いばかりの星が煌めき始めていた。
年に一度の逢瀬を楽しんでいるだろう織姫と彦星を見上げながら、水琴は右足にそっと手を添える。
「………」
目を閉じる。耳の奥で聞こえるのは今は遠い、家族の声。
肩を組み陽気に歌い、酒を飲み踊り騒ぐ。
そしてその中心で、いつも太陽の笑顔で笑っている、__
「水琴」
名を呼ばれはっと目を開ける。
そこには水琴を見上げるエースの姿があった。
「どうしたの?」
「ルフィが潰れちまった」
「えっ?!」
「一口しか飲んでなかったんだけど、ルフィにはきつかったな」
くったりとしているルフィをサボが背負い困ったように水琴へ目を向ける。
「大変!早く水飲ませてあげなきゃ」
たとえ一口といったって、小さな子どもには毒だろう。
慌ててサボからルフィを受け取り、平気そうな顔をしている二人へも目をやった。
今はけろりとしているようだが、度数が強い酒のようだし心配だ。
「エースとサボもちゃんと水飲んでね」
「おれたちは大丈夫だよ別に」
「分からないでしょ。お風呂で一気に回ることもあるんだから!」
「それって水琴の体験談?」
「別の人のね」
「こいつワクなんだから酔う訳ねーだろ」
慌ただしく小屋へと戻る四人の足音が夜の森に響く。
そんな四人を見守るように、夜空では星が瞬いていた。