第73章 時の混じる場所
「……ん?」
ふと向こうの壁の端に子どもの姿を見た気がした。
村の子だろうか。でもまさかこんな危険な場所に子どもが一人で訪れるとも思えない。
「なんだろう…」
気になって水琴は足を運ぶ。
「確かこの辺りだった気が…」
きょろきょろと見渡す。
その視界に再び小さな姿が映った。
その姿にぎょっとする。
「……エース?」
くせっけの髪。背丈ほどもある鉄パイプを担ぐ姿。
間違いなくエースだと水琴は口をあんぐりと開ける。
「一体どういうこと…」
ゆらりと壁の奥に消えていこうとするエースの背を追い掛けるようにそっと壁に手をつく。
その瞬間、鋭い光が水琴を包んだ。
「え____っ?!」
強烈な光に目を閉じる。
その光が収まった頃、水琴の姿はなく、ただ薄暗い空間が広がるだけだった。