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【ONEPIECE】恵風は海を渡る【エース】

第69章 ハリネズミのジレンマ




 
 受け取った資料を机の上に置く。
 急ぎでないのなら明日の朝礼で配れば済む話だ。なのにわざわざ水琴まで話を持ってきたということは、背中を押してくれたということだろう。

 通路へ出る。偶然にも近くに人の姿は無かった。
 少し離れたエースの部屋へ向かう。
 いつもは何気なく開けている扉が妙に威圧感を持ち出迎える。意を決して、水琴はその扉を叩いた。

 「エース?私だけど、入ってもいい?」

 一声かけるが返事はない。いないのだろうかと思ったが、馴染んだ気配は確かに部屋の中から感じる。
 もしかして怒っているのだろうかとしゅんとする。怒るのも無理はないだろう。それだけ失礼なことを水琴はしていたのだから。
 だけどせめて謝罪はきちんと顔を合わせて行いたい、と水琴は再度ノックする。

 「……?」

 あまりにもない反応に水琴はそっとドアノブを回す。
 なんの抵抗もなく扉は静かに開いた。
 息を殺して中の様子を伺う。


 ベッドの上に転がる姿を見て、水琴は身体を部屋の中に滑り込ませた。

 「……寝てる」

 気を張っていたのが馬鹿らしくなるくらい、気持ち良さそうに寝息を立てるエースにそろそろと近づいていく。
 かなり深く眠っているのか。エースは身動ぎもせずすやすやと眠っていた。
 少しばかりの安堵と共に水琴は音を立てないようベッドに腰を下ろす。

 額にかかる髪を指で横に流す。想像よりも猫っ毛で柔らかい感触が指の間を滑っていった。


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