第65章 たとえ御旗は異なれど
そうだった。
失念していたが、彼らは麦わら、そして水琴たちは白ひげだ。
旅の最初にエースが言っていた言葉を思い出す。
「大丈夫さ。これくらいの障害、あいつらならちゃんと乗り越えられる」
なんたっておれの弟だからな、と呟くエースの言葉は誇らしげだ。
「……そうだよね」
「ほら、おれたちだって人の心配してられねェぞ」
見れば別の艦隊がエースたちを捕獲しようと迫ってくるところだった。
「今度は遠慮なく行くからな。ちゃんとついてこいよ」
「頑張るけど、ちょっとは加減してよね」
炎が燃える。
その横で、風もまた吹き荒れた。
***
何も遮るものがない海上を二隻の細い影が白波を生みひた走る。
今頃ルフィたちはビビの答えを聞いているのだろう。
気にならないと言えば嘘になるが、聞く必要はないと水琴は思った。
彼女はきっと、残るだろう。
それは責任感や義務感からではなく、ただただあの国を愛するがゆえに。
「ねぇエース。親父さんたちにはいつ連絡するの?」
「あー。もう少し離れてからだな。海軍の包囲網抜けたとはいえまだ近いし。
次の島で落ち着いてからの方がお前もゆっくり話せるだろ」
「そうだね。それじゃあ次の島まで急ごうよ!」
「はいはい」
エースが案内のために少し先へストライカーを操る。その背中を追おうと水琴は縄を掴みなおした。
その腕に巻かれた包帯が目に入る。
「………」
しゅるり、包帯を解き。
水琴はその下に刻まれた“仲間の印”を見つめた。
__これから、何があっても
知らず微笑む。
__左腕のこれが、仲間の印だ!!
そう、たとえ同じ船に乗っていなくても。
異なる旗を掲げていようと。
私たちは、確かに仲間だ。
腕を空へと掲げる。
奇しくも同じ海の上、ルフィとビビたちが印を掲げあっていたことを、水琴は知らない。