第61章 決戦の舞台
「なに、これ…!」
「国王軍だ!どうやら誰か先走った奴がいるらしいな」
「なんて馬鹿なことを……国王軍っ!」
ビビは城壁上に待機する軍を睨み上げる。
今の砲撃は実は潜入しているバロックワークスの者の手によるものなのだが、それをビビたちが知る由もないし、重要ではない。
重要なのは今の砲撃により、最後の対話のチャンスが潰えたということだけだ。
視界を塞がれた反乱軍が炎に巻き込まれるのを防ぐため、エースは炎上網で生んだ炎を消しさる。
「このままここにいたんじゃ轢かれちまう!いったん退くぞ!」
「ビビ!早く!!」
砂埃の向こうから水琴がビビを呼ぶ声がする。
一緒にいるところを見られてはまずいと二人は離れていたのだが、そのためビビの位置が分からなくなっていた。
「ダメよ!みんな止まって!!」
ビビを呼び続ける水琴には悪いが、ビビはここを動くつもりはなかった。
ここで止められなければ、手遅れになってしまう。
「お願い!リーダー!!」
「………っ?!」
すぐ横を、馬が駆け抜けていった。
馬上の主を見る余裕などない。
だがビビには、それがコーザだと確信できた。
「リーダー!待って、話を……っ!」
呼び止めようと振り返る。
その背を背後から続く馬が掠め、ビビはバランスを崩し倒れ込んだ。
視界が悪い中、地面へ倒れ込めばどうなるか。
迫る蹄にビビは死を意識した。