第40章 風の呼ぶ声
「水琴」
俯く水琴にベイの声が優しく掛かる。
顔を上げれば声と同様柔らかな表情を浮かべたベイが水琴を見つめていた。
「あんたはあの子じゃない。参考にするなとは言わないが、囚われる必要は無い」
水琴は、水琴だよ。
その言葉に、知らず知らずの内にその女性と自分を比べていたことに気付いた。
「……そう、だよね。私は私のやり方で、強くなればいいよね」
「そうさ。気にするだけ損だよ」
長居したね、とベイが去った後水琴は窓から外の景色を眺める。
白に染まる風景は見慣れない景色で、まるでこの世界に独り取り残されたように感じられた。
吐く息が白い。
雪に反射する光に目が痛みそっと閉じた。
耳を澄ます。
声は聞こえない。
***
カタリ、と窓が揺れる音で水琴は目を覚ました。
寒さから身を守るように布団の中で丸くなる。
しばらく眠気との戦いを繰り広げ、ようやくのそりと身を起こした。
大きく伸びをして眠気を飛ばす。
ふと音のした窓へ目をやった。きちんと閉めていたはずの窓は僅かに開いており、カーテンが挟まっている。
夜確かに閉めたはずだが、記憶違いだろうか。
薄着の状態で冷たい風が吹き込むのは勘弁だと水琴はカーディガンを羽織り窓に近寄り、挟まっているカーテンをそっと抜く。
と、その端に何かが結び付けられているのが目に入った。
なんだろうと解き広げる。
そしてぱちりと瞬きしたかと思えばふわりと破顔した。