第27章 月の民の心の行方
「あーあー、遊び相手がいなくなるとつまんないな」
「……ハルタ」
「ま、帰っても元気でね。水琴なら心配ないと思うけど」
「ハルタこそ、あんまり悪戯してマルコに怒られないようにね」
「それは難しいな」
「水琴」
少し離れたところからイゾウに呼ばれる。
「マルコが呼んでるぞ」
「…あぁ、うん」
さぁ、最後の大仕事だ。
気合を入れて白ひげの傍へ近づく。
「来たか」
水琴を見つけ、白ひげが席を立つ。
「聞けェェ!野郎ども!!」
ざわついていた甲板がすぐさま静まり返る。
この船に来た時と同じ光景を見つめながら、水琴は始まりの日を思い出していた。
あの時は、ただひたすら不安だった。
自分とは全く異なる屈強な男たちに囲まれて、果たして自分は受け入れてもらえるだろうかと。
今は、見た目に反してずっとずっと優しい彼らと別れることが、ただただ寂しい。
けれど、最後は笑って別れを告げようと決めたのだ。