第4章 夕虹
ベッド下で膝だちだった俺は、智を抱きしめたままベッドにあがる。
そうして、二人でごろんと横になった。
「ニノ……」
「なに」
「もっと」
智はまあるくなって、俺にすりよってくる。
不安になると無意識に俺の体のどこかしらに、肌を
くっつけてくるのだ。
俺は、宥めるように背中を擦った。
「ね……キスしよ」
そうして、とどめとばかりに、智は水分量の多い目で俺を見上げてくる。
その目のなかに愛情や恋心は一切ない。
ただ、不安な気持ちをしずめたいだけの行為だと分かってるのに……智への自分の気持ちに気づいてしまった俺は錯覚しそうになる。
残酷だよな……
俺は、それでも、うん、と頷いて、顔をそっと傾けた。
智が、小さく口を開いて、俺の唇を招き入れる。
背中を擦るように。
頭を撫でるように。
その延長のキスを俺たちはした。
「んっ……んん」
「ふぅ……ん……」
その証拠に何度舌をいれても、何度吸い上げても。
智の体が反応することはない。
色っぽい声は漏れるけど、そのさきには進まない。
俺は、昂る気持ちを気力でねじふせながら、スキンシップという名のキスを続けた。