第6章 春の虹
会社にいるときは、それなりに気を張っていたのだろう。
建物から一歩外に出た瞬間、張り詰めていたものがブツンと切れた。
体は熱くて重いし、頭痛はするし、目眩はするしで、……正直家に無事に帰りつけたのが奇跡だと思う。
スラックスを脱ぎすてるところまではしたけれど、部屋着に着替える気力がない。
ワイシャツとパンツのまま、ベッドにもぐりこんだ。
寒………
着替えなくちゃ。とか、病院に行かなくちゃ。とか、薬を飲まなくちゃ、とかやらなくてはならないことはあるのだろうが、とにかく横になりたかった。
寒くて寒くて、肌掛けを体にまきつけて、ぐるぐるとまわる視界から逃れるように目を閉じた。
気配を感じで目を開ける。
…………大丈夫か。すまん。起こしたな
昌宏さ…ん…なんで……?
………智が寝たから、抜け出してきた。ごめんな。ずっと傍にいてやれなくて
いいのに……
…………強がんなよ。どうだ。少しはマシか。何か欲しいものはあるか
いらない……
…………じゃ、こうしててやる
大きな手が俺の手を握る。
何よりも安心する手に包まれると、頭痛は嘘のようにおさまった。