第6章 春の虹
ならば、話はかわってくる。
俺は、1ヶ月前の智との会話を、脳内で反芻した。
弟のように思っている彼は、少し困ったような顔で、いろいろと語ってくれたっけ。
「なら……今すぐじゃなくていいけど、いつか、智に会ってやってくれる?」
「え……?」
俺の言葉に二宮くんは絶句した。
なぜだって顔にかいてある。
そうだよね、智と会ってもどんな顔したらよいのかわからないって言ったばかりだ。
でもね、俺は智の話も聞いてんだよね、実は。
「最近、二宮とは会ってないの?って智に聞いたことがあるんだ」
「…………」
「智は……二宮に会えないことをすごく気にしてる。むしろ会いたいっていってた」
「…………」
「でも、自分からは会えないって。ニノが会いに来てくれるまで待ってるって。そう言ってたよ」
「…………」
二宮くんは、呆然とした顔をしてる。
「口調からは恨んでるとか、悲しんでるとか、そういうのは一切なかったように思うよ。ただ……自分からは連絡とれないって。でも謝りたいって。」
二宮くんは、ふらふらと首を緩く振った。
「……あ………あいつが俺に謝るようなことなんて何も………」
「無神経だった……って。そのとき俺にはなんのことか分からなかったんだけど、二宮の話を聞いて分かったよ」