第14章 誕生
「ふにゃあ!ふにゃあ!」
可愛らしい、でも力強い泣き声が部屋に響き渡る。
「おめでとうございます!
可愛い女の子ですよ!」
赤ちゃんはすぐに診察のために近くの台に連れて行かれる。
頭から足の指の先まで入っていた力が一気に抜ける。
無事に生まれてくれた安心感で、涙が溢れる。
「すずらん、よく頑張ったね。
ありがとう」
カカシがわたしの頭をそっと撫でる。
カカシを見上げると、その目にも涙が溜まっていた。
コクリと頷くと、看護師さんが綺麗に清めた赤ちゃんをつれてきて、わたしの胸元を少しはだけさせ、うつ伏せにのせてタオルをかけてくれる。
いつの間にか泣きやんだ赤ちゃんは、温かく、とても小さかった。
この小さな身体で、無事に産まれてきてくれた。
「…よく、頑張ったね」
そっと小さな頭を撫でると、その手にカカシの手が重なる。
「2人で大切に育てようね」
「うん」
カカシがわたしと赤ちゃん2人を包み込むように抱きしめてくれる。
その手に巻かれた痛々しい包帯を見て、陣痛の凄まじさで忘れていたが、カカシが毒で倒れたことを思い出す。
「カカシ!
体大丈夫なの!?」
するとカカシがふっと苦笑する。
「もう。本当にすずらんは…。
すずらんの方がよっぽど満身創痍でしょ。
いつも自分そっちのけで人の心配ばっかするんだから…」
「だって…心配だよ」
「ありがと。大丈夫だよ」
「…よかった。
みんな無事で、本当によかった…」
ホッとすると、気が抜けたのか目からまた涙がこぼれ落ちた。
カカシが真面目な顔になって、わたしの涙をぬぐってくれる。
「何があっても、2人は守るから」
「カカシも無事じゃなきゃ、意味ないんだからね」
カカシをきっと睨んで言うと、少しビックリした顔をして、「はい」と眉尻を下げて笑う。
いつの間にか夜が明け、部屋には新しい朝の光が差し込んでいた。