第13章 夏夜の願い
「寒くない?」
今日は意外と風があり、夏でも涼しい。
そう聞くと、すずらんがオレの腕をとり、自分の体に回して呟く。
「こうしてたら大丈夫。
カカシの体温に触れてたら、なんか気持ち悪いのも大丈夫になってきた」
振り向いてにっこり笑うすずらんが可愛くて、その唇に口付けると、背中を丸めてぴったりと引っ付くように少し力を込めて抱きしめる。
「良かった…。
来年はこの子も一緒に花火見れるのか。
なんか、不思議だね…」
そっとすずらんのお腹を撫でる。
「ほんとだね。
来年は一緒に見ようねー」
すずらんもお腹を撫でて、赤ちゃんに話しかける。
その表情がすごく柔らかくて優しくて、すでに彼女が母親なんだなぁ、と感心してしまう。
その綺麗な横顔を見つめていると、視線に気付いたすずらんが「ん?」とオレの方を向く。
「ううん」
首を振りすずらんに頬を寄せて、その甘い匂いの髪に顔を埋める。
「カカシ、くすぐったいよ」
身をよじって避けるすずらんを執拗に追いかけ、耳たぶに、頬に、唇に口付ける。
「すずらん、愛してる」
唇を離し、横抱きになったすずらんの潤んだ瞳を見ながら告げると、すずらんがオレの首に手を回して抱きつきながら「わたしも。わたしも愛してるよ。カカシ…」と囁き、頬にキスをする。
愛しい温もりを抱きしめて、降り注ぐような優しい幸せを噛み締める。
この幸せが続くように、すずらんの笑顔が曇らないようにと、火花が彩る夏の夜空に心から願った。