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きみを想う

第13章 夏夜の願い


「あっ、すずらん。
片付けくらい自分でやるから、先に風呂入って寝ときなよ」

スポンジを泡立て洗おうとしていたすずらんを、追い立てるようにキッチンから追い出す。

「すずらんが倒れたら、心配で仕事どころじゃなくなっちゃうから。
はい。早く早く!」

でも、とまだ食い下がろうとするすずらんの背中を押して風呂場まで連れていく。

「それとも、一緒に入る?」

「!!」

耳元でわざと囁くと、すずらんがビクッと肩をすくませてこっちを見る。

「はっ入らない!」

「冗談だよ。
一緒に入ったら何もせずにいられる自信ないし」

顔を真っ赤にしたすずらんの、いつまでもウブな反応に笑ってしまうと、「もう!からかわないで!」とオレの胸を拳で叩く。

「ふふ」

その全然痛くない報復に頬へのキスで答えると、すずらんが困ったように笑ってくれる。

「じゃあ、お言葉に甘えて先に入ってくるね」

「うん。ごゆっくり」

元気そうなすずらんにホッとしつつ、脱衣所へ入っていくのを見送り、食器を洗いにキッチンへと戻る。




次の日、いつも通り出勤して相変わらずの書類の山と格闘していると、サクラが凄い勢いで部屋に入ってきた。

「せんせ…じゃなかった。
6代目!すずらんさんが倒れて病院に運ばれたって…!」

「え!?」

ガタンと思わず椅子から立ち上がる。

「買い物してる途中で倒れちゃったみたい!
今ちょうど綱手様が見てくれてます。
で、今すぐ6代目を連れて来いって!」

シカマルを見ると無言で頷いてくれる。

「ごめん。すぐ戻るから!」

そう言って駆け出す。
すぐオレを呼べなんて、よっぽど悪いんだろうか…。
ドキリと胸が嫌な音を立てる。
昨日やっぱり、すぐに寝かせればよかった。
手から嫌な汗が出てくる。

とにかく今は急いで病院に行かなければ…。

サクラが教えてくれた病室に勢いよく駆け込む。

「あ、カカシ」

とすずらんが嬉しそうに迎えてくれる。

「えらく早かったな。カカシ」

すずらんの前に立っていた綱手様が苦笑する。
2人の和やかな様子に、先ほどまでの焦りが疑問に変わっていく。

「あ、え?すずらんが倒れたって、聞いて…」

「ああ、貧血だ」

「え?ひんけつ…?」
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