第11章 蜜月
「ただいま〜」
ドアを開け靴をぬいでいると、パタパタと可愛い足音が聞こえてくる。
「おかえり!カカシ。
わっ!!」
満開の笑顔で迎えてくれるすずらんを、温もりを確かめるように抱きしめる。
「ただいま」
すずらんのいつものいい匂いに混じって、ごはんのいい匂いがする。
オレに抱きしめられたまますずらんが顔だけを上げて、オレを見る。
「カカシ、お腹空いてる?ご飯食べる?」
「うん。でもその前に…」
口布を下げ、柔らかな唇に口付ける。
「んっ…」
すずらんが頬を紅潮させ、目を閉じる。
唇を離すと、すずらんがへへ、と笑い、オレに抱きついてきた。
片手ですずらんの背中を引き寄せ髪をそっと撫でて、頭のてっぺんにも口付けを送る。
「今日のご飯なに?」
「今日は雨でちょっと寒かったから、鍋焼きうどんにしてみた」
「いいね」
結婚式までの5ヶ月間、料理教室に通ったり、シマさんに教えてもらったりで、すずらんはビックリするくらい料理が上手になっていた。
夜は遅くなりがちだから、軽食を作ってくれて、栄養が偏らないように、お昼に栄養満点のお弁当を作ってくれている。
「すずらん、いつもありがと」
ポロリとでた言葉にすずらんが笑顔になる。
「カカシも、いつもお仕事ご苦労様」
食卓に着くと、小さなお鍋をすずらんが運んできてくれる。
蓋を開けるといい匂いとともに、湯気がフワリと上がる。
落とし卵と鶏肉、野菜たっぷりのうどんは、生姜が効いていて、すごくおいしい。
「うん。うまい」
「ふふ、よかった」
2人分のお茶を持って向かいに座ったすずらんが、食べているオレを頰杖をついて見ている。
「明日は晴れるといいね」
「予報だと、晴れそうだよ」
「うん。楽しみだね」
すずらんの笑みが深くなる。
明日からオレたちは、新婚旅行に行く。
里のみんなが、結婚祝いで温泉旅行をプレゼントしてくれたのだ。
といっても、仕事の都合もあり、1泊だけなのだが。
それでも、すずらんと2人きりでのんびり2日間も過ごせるのは、すごく楽しみだ。