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きみを想う

第9章 正月


「ごめん。
まともなデートも連れてってあげれてないな、オレ」

「仕事が大変なんだから仕方ないよ!
わたしはカカシが夜逢いに来てくれるだけでも、十分幸せだよ。
それに、デートなら一回花火に連れてってくれたじゃない」

ニコリとすずらんが笑う。
想いが通じ合った日の花火のことを言っているのだろう。
健気な答えに、もどかしくなる。

「すずらん。
花火、来年も絶対一緒に見ようね」

「うん!」

あまりにも眩しい笑顔に、触れたくなってそっとキスをする。

「…っ!!カカシ、ここ外だよ!」

「だってすずらんが可愛かったから」

顔を真っ赤にしているすずらんをよそに、何事もなかったかのように歩き出す。

「すずらん、そういえば神様になんて願い事したの?」

「…秘密……」

気まずそうにすずらんが目を逸らす。
そんなに言いにくい願い事って何だろう。

「オレは、この幸せが続きますようにって願ったよ」

繋いでいた手が引っ張られ振り向くと、すずらんが立ち止まり、下を向いている。
よく見ると泣いていて、ぎょっとして顔を覗きこむ。

「すずらん!?どうしたの?
大丈夫??」

下を向いたまま涙をぐいと手で拭うと、すずらんがポツリ、ポツリと喋り出す。

「……ごめんね、カカシ。
わたし……。
わたしは、カカシともっとたくさん一緒に過ごせますようにって、願ったの。
さっき、格好つけて聞き分けのいいふりして、あんなこと言ったのに……。
ほんとはね、ほんとは、寂しいって、もっとずっと一緒にいたいって、いつも思ってて……」

すずらんは、そこで言葉を詰まらせ、大きくしゃくり上げた。
目から大粒の涙がポタポタとこぼれ落ちていく。

ずっと我慢させてしまっていた自分が情けない。
すずらんの肩を抱き寄せ、ギュッと抱きしめる。

「オレこそごめん。
いつも寂しい思いさせて……。
オレも、もっとすずらんのそばにいたいって、いつも会いたいって思ってるよ」

すずらんがオレの背に手を回し、しがみついてくる。
ヒック、ヒックとしゃくり上げるすずらんを宥めるように、そっとその背中を撫でる。
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