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きみを想う

第5章 樹上の逢瀬


「カカシ!」

綱手様に呼ばれて振り返る。
ガシッと肩を組まれて、逃げるに逃げられない。

「すずらん嬢と、うまくいってるみたいだな」

カカシが花火の夜、浴衣姿の美女を助けて消えた話は瞬く間に木の葉の里中に広まった。
待ち合わせ時刻よりも早く着いたすずらんを、慌てて迎えにいったのが運の尽き。
火影マントをバッチリつけたまま行ってしまったのだ。

変な輩に絡まれないか心配だったと言うのもあるが、きっと着飾って来てくれるすずらんを、他の男の目に晒させたくなかった。

早めに待ち合わせ場所に行こうとは思っていたが、それ以上にすずらんの到着は早かった。
そして、案の定男にからまれていた。

次からは、家まで迎えに行こう。
そう、固く誓ったのだった。

「おい!惚けてるぞ!!」

バシッと馬鹿力でどつかれる。

「イタ……」

「イッシン殿は火の国きってのよい大名だ。
適当に付き合ったら、承知せんぞ」

「綱手様はイッシン様とお知り合いですか?」

「ああ。火影のときに何度かお会いした。
木の葉の里にも任務を依頼して下さったり、とてもよい上客でもある」

「そうだったんですか」

「だからわかっているな」

顔をこれでもかと言うほど近づけられ、鼻先に指を突きつけられる。

「安心してください。
オレも本気ですから」

顔を両の手のひらでガードしながら言うと、綱手様が満足気に笑う。

「お前の言葉、信じるぞ!」

「はい……」

にっと笑うと、綱手様が行ってしまう。
やっと解放され、ホッとして火影室へと向かう。


火影室に入ると、もうシカマルが来ていた。

「おはよーございます」

「おはよ」

新たな書類や、諸事の報告を受け、机に向かってさっそく仕事を始める。

「……」

「美女って何者なんすか」

いきなりシカマルが話を振ってくる。
何事にも興味のなさそうなコイツが聞いてくるなんて珍しい。
ここまで広まってしまっては隠しても仕方がないので、正直に言う。

「あの、前お見合いした大名の娘だよ」

「え?
断ったんじゃなかったんすか」

「んー、ま、色々あってね」

ふーん、と相槌をうち、シカマルはそれ以上聞いてこなかった。
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