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きみを想う

第4章 花火


しばらく抱きしめられていたけど、そうだ、と火影様が体を少し離し、「落としちゃうといけないんで、下駄を脱いでください」とおもむろに言う。

訳がわからないまま従うと、わたしを抱き抱えて、火影様がジャンプする。
そして、屋上に登ってきた階段の屋根の部分に上り、ストンとわたしを後ろから抱きしめて座る。

「ここから見るのが一番きれいだと思ってたんです」

確かにそこからだと柵もなく、夜空に咲く花火が綺麗に見えた。
でもわたしは背中に感じる熱に、回された腕に、近い顔に落ち着かなくて、正直花火どころではなくなってしまう。

真っ赤な顔で「近いです…火影様……」と言うと、
「離したくないから、我慢してください」
と一蹴されてしまう。

「あと、火影様じゃなくてカカシです。
オレもすずらんって呼んでいいですか?」

低い声で、耳元で名前を呼ばれて、顔が熱くなる。

「はい。」

「すずらん……」

「カカシ…様?」

「様もいらないです。あと、敬語もやめましょう。
もう恋人なんだし。
はい、もう一回」

火影様が、楽しそうに言う。

「カカシ……?」

「うん。何?」

「カカシ……」

「ふふ、何?すずらん」

「好き……」

お腹に回されていた手が、わたしの手に触れ、指を絡める。

「オレも、好き」

火影様の顔が近づき、唇がまた触れる。
一度離れて、すぐに啄むように何度も口づけが繰り返される。

唇が離れると、スリと繋いでいない方の手で、頬を撫でられる。
火影様の顔を見上げると、幸せそうに微笑むから、わたしも微笑み返した。
その日は、花火が終わるまでずっと火影様の温かい腕の中に包まれていた。
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