第2章 拝啓、ロボットさんへ【イグゼキュター】
「貴方がさくら様ですね。貴方を今後護衛するようにとドクターから仰せつかってきました、イグゼキュターと申します。早速ですが、今からどちらへ行かれるのですか。そちらは地下牢の方角ですが。あまり貴方に害なす輩と話すのはおすすめしません」
頭の上で浮かぶ輪っか。そして背中の翼。
一瞬でサンクタ族だと分かって苦笑いを浮かべた。コイツはやばい奴だ、と。
「あ、っと…イグゼキュターさん?」
「はい、何でしょう」
「私を、護衛に来たと言いました…よね?それは、また何で…?」
「ドクターの言葉をお借りして申し上げますと、"さくらという異世界人は自分の能力が世界に多大な影響を及ぼす貴重なものだとわかっていながら、最近はレユニオン兵がいる地下牢に行っては戦い方を乞いに行ったり、方向音痴のくせにロドス中をフラフラと出歩いたりして危なっかし"…いかがされましたか」
「も、もういいです…」
片手を前に出して皆まで言うな、と止めた。
一字一句間違いなく言ったのだろう。その言葉は私の心に深々と刺さり、大ダメージを負わせていった。
どうやらこの大男はオブラートに包むという言葉を知らないらしい。しかも、さっき出会ってからまったく表情を変えず、淡々と話すその姿はまるで、
「あ、の。大変失礼なのですが…イグゼキュターさんはロボットか何かなのでしょうか」
ロドスの基地には購買部のクロージャが作ったロボットが数台ある。戦場は勿論、あらゆる施設にも赴き、人間を手伝ってくれる便利なロボットたちだ。
その類か?と思って聞いたのだが、これは相手が憤慨してもおかしくない質問だったな、とやや後悔気味に思っていると、イグゼキュターはまた顔色一つ変えず言った。
「よく言われます。私は人より感情が薄いようなので」
「いやそこは怒るところでしょ」
思わずツッコミを入れてしまった。
それほどまでに淡々と言うものだから驚いてしまった結果である。
彼は少し小首を傾げてこちらをつまらなそうやら眠たそうとも捉えることができる無気力な目で見つめる。
「え…と、じゃあ私はこの辺で…」
そう言って去ろうとしたら大きい気配はぴったりと後ろをついてくる。
サンクタ族とは、扱いが大変難しい種族だ。