第5章 髪
取り終わったら写真を確認。
続いて角の番になろうとしたが、
まだ肩の力がガチガチに張ったままで…
赤司の提案で
俺と二人で撮ることになった。
ツーショットで並び、
緊張をほぐしてやるために
肩をポンポンと叩く。
「そういや飲み会のときも、
写真撮られんの避けてたよな。
やっぱタダには抗えなかったか?」
「おっしゃる通りで…」
「ヘッドスパ、気持ち良かったろ?
他の奴にもやってもらったが、
俺はやっぱり、
ユウの奴に惚れ込んでる」
「…え?」
「あいつの腕に惚れてるんだ。
俺はいつも面倒かけて
世話になってるユウに何か恩返ししたくて…、
きっぱり止めたモデルの仕事を引き受けた。
多少は、
自分の価値をはかりたいってこともあるがな。
こんなに早く結婚するつもりじゃなかったし、
本当はもっと遊んでたかったけど、
一児のパパになっちまった。
今の生活に満足してないワケではないが、
やっぱまだ、男として求められたいだろ?
だからおまえもさ。
世話になった恩とか、
求められたい欲求とか、そーいうモンないの?」
瞬くシャッターが切られる中で、
角の鼓膜にだけ拾える小さな声で伝える。
俺の中にある写真に込めた気持ちの内側を。