第41章 進学
姿勢のよい牛垣くんの後ろに立ち、自分も引き締まらなければと背筋を伸ばす。
だらだら、ゆらゆら、ぺたぺた歩くほかの子達とは訳が違う。
牛垣くんの姿勢から育ちのよさを感じる。
弓道の佇まいからくるものだろうか。
だとしても小学生の時の話し。
それでも牛垣くんの後ろ姿はほかの子より男らしく、数段大人びてみえてしまう。
(というか女子の視線が突き刺さる…)
チャイムが鳴る前も薄っすら感じていた。
気付かないフリをしていたけど会話に入りたそうにウズウズしていた感じ。
(見た目も性格も完ぺきだもんね)
1組から入場曲にあわせて入場し、席に着席する。
後ろには父兄や在校生の方もたくさんいて、父は仕事を休んで来てくれていた。
歓迎の弾幕。
校長先生の長い挨拶。
在校生代表としての歓迎の言葉を終えると、続いて新入生代表挨拶となり牛垣武明くんの名前が呼ばれる。
(え、えっ、えっ!?牛垣くん!?)
全然緊張している素振りはなかった。
チャイムが鳴るギリギリまで俺と話していた。
在校生や父兄にしっかり整ったお辞儀を向け、凛とした姿勢で壇上にあがって行く。
(代表挨拶って成績トップの人とか、そういう子が多いって聞くよね…。見た目や性格だけでなく頭も良くて、これで運動神経抜群だったらもうサイボーグプリンスじゃん)
人間からかけ離れた完璧さ。
もはや人間ではない。
演台に置かれた式辞を広げ読み上げていく。
広げたはよいが全く手元を見ていない。
丸暗記しているのか堂々とした丁寧な話し方。
前を向いて話すことで、お偉い政治家たちよりも説得力がある。
目線は常に壇上の下にいる在校生や父兄たちに向けている。
(…おったまげー)
さっきまでの砕けた牛垣くんとはまるで別人。
聞いているだけなのに心臓がずっとバクバクしてる。
すごい。
牛垣くんはイケメンすぎる。
完璧に読み終えた牛垣くんは一礼し、会場全体の空気をみれば誰もが心奪われたのだった。