第39章 フラット *
主任は文句も言わずご飯支度を手伝ってくれる。
やっぱり主任は器用だ。
俺の当番なのにほとんど主任が動いている。
「あー…えっと。ありがとうございます」
「そんなに指突っ込まれたくないのか?」
「ご、ご飯中ですよ。下ネタ禁止です」
「お前が謝ったらその気にさせてベッドに持ち込めるんだがなぁ…」
「隔週って約束したじゃないですか。忘れてたのは悪かったとは思いますけど謝りません」
「悪かったって思うのは謝っていると認識していいか?」
「………」
「に、睨むなよ。分かった。飯食い終わったからチャラにする」
「それは良かったです」
冷たいあしらい方だろうが仕方がない。
今日話すと決めたんだ。
色々することを終えていざ話そうとすると喉が絞まる。
心拍数が上がる。
体が熱くなってくる。
言わなきゃ。
主任のために。
ユウさんのために。
俺が断ち切らなきゃならないんだ。
「アキさん。少しお話がありまして…」
「なんだよ。急に改まって」
これを言ったら二度と主任の体温が遠くなる。
「俺は、とても幸せです」
「………」
「アキさんのことがすごく大好きです」
「………」
「ですが…、最近辛いんです。貴方のことが好き過ぎて見失いたいのにそれができない。俺は、ユウさんと一緒にいるアキさんが好きなんだと気付いてしまったから…──」
「!!……」
二人のギクシャクした様子なんて見続けたくない。
いつでもずっと笑っていてほしい。
あんな二人に俺はなりたいと思った。
どちらも俺の居場所じゃないと気付けたから。
だからどうか、どうか、仲直りしてください。
■角湊の場合END■