第36章 暗雲
それから赤司くんの携帯が震え、用事が出来たとかで行ってしまった。
話を聞いてあげるべきだったのか。
あんなに明るい赤司くんでも根っこの部分になにかを抱えている。
再婚同士の兄弟関係…主任との不仲説…ヤリチン状態となにか因果関係があるのだろうか。
「詮索するのは止そう」
今日で会ったのが二回目。
主任の親友の義弟さんとはいえそれ以上の縁なんてない。
赤司くんと会ったらユウさんのことを思い出した。
最近パーマをなおしてもらったばかりだから特に顔を出す理由もなく。
ヘッドスパは気持ち良かったし、主任のモデル俳優時代のエピソードだけじゃなく、高校生活の話とかもっと聞きたいと思ったり…。
「会社の方、どうなってるだろ…」
休職という形で会社を休ませてもらっている現状。
そのまま辞任したいということを課長に電話で話したが、もう少し考えてみて?と返されてしまった。
直属の上司である牛垣主任に連絡しなかったのは責任を感じさせると思ったからだ。
主任は真面目な人だ。
褒められた容姿だけじゃなく確かな実績や経験があり、ワンマンではなく周りの意見や情報を聞き入れて、的確に指示を出すから信頼や尊敬されて人も必然的についてくる。
だから自分も同じくついて行きたいと思った。
「主任とこの先離れるのは寂しいけど、一人で頑張らなきゃな」
牛垣主任は俺の性癖を理解してくれた人だ。
部下思いの優しい人。
これ以上、あの人の優しさや甘えてばかりいると癖になりそうで早めに断ち切るのがベストだと思うのであった。