第36章 暗雲
パーマを掛けたこともだいぶ弄られ慣れ、書類整理のためデスクに向かう。
主任は午前から外勤や会議、打ち合わせで今日はチラッと顔を見ただけだった。
(なにか分からないけど疲れた顔してたよな…。相談に乗りたいけどどうやって食事に誘っていいのかも分からないし……)
今まで人を誘うことをしたことがなかった。
それに牛垣主任は人気者。
下手な噂が立たぬよう二人きりの食事は常に断っており、相談ごとがあれば食事の席ではなく社内で済ませる徹底ぶり。
男でも下心がある連中だったり、貶めたいと企む輩もいるようだ。
牛垣主任は自分のことを理解している。
特別優しくされたと思うのは憧れで増幅され、上司だから周り以上に接してくれた。
(またオフの時の主任みたいなぁ…)
ユウさんの前で喋る素の主任は何人知っているのだろう。
自分はいまどれだけ仕事で認められたのだろうか。
業績も伸びてきたから信用は得ているんだと思いたいけれど…
「ッ……───」
何気なく開いたメールだった。
送信されてから1分も経っていない同時刻。
どうして……っ、
(たす…けて……、主任……)
苦しくて苦しくて息をすることすらもできなくて、視界が真っ暗に落ちて行った。