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【R18】Querer【創作BL】

第35章 美容院





主任の撮影が終わり、
自分の番が回ってきた瞬間
ほぐれたはずの筋肉が強張っていく。

すると気を利かせた赤司くんが
最初は主任と撮ってみては?と提案してくれたのだった。





「やっぱタダには抗えなかったか?」


「おっしゃる通りで…」


「ヘッドスパ、気持ち良かったろ?
他の奴にもやってもらったが、
俺はやっぱり、

ユウの奴に惚れ込んでる」





惚れ込んでる、と言われて
ドキッとしてしまった。

美容師として親友を褒め称え意味だったけど
誤解するような
聞き返してしまう発言が多いのは、
主任との会話を
楽しんでいる自分がいるようだ。



目付きが悪い自分が嫌いで
暗い性格の自分が嫌いで
それでいて
報われたがっている自分も嫌いだった。



けれど主任に
自分のこと大切にしろだとか
少しは自惚れろだとか
好きと言われて
目を背けてきた自分自身と見詰め合う。





「好きだのなんだの褒められるうちは華なんだ。
今から枯らしておくなんてもったいないぞ」


「そ…う、ですね…」





誰かから好きや嫌いと言われても
何とも思わないが
憧れる主任から言われると嬉しかった。

ほんの少しでいい。

ほんの少し背伸びをすれば
嫌いな自分を増やすより
好きな自分が増えていくような気がする。





「それじゃあラスト!
兄貴も入って~」


「はーい。
こっちはSNS用だから
ゆるく撮ってもらおっか」


「角。終盤からよくなってた。
誰かさんのおかげとは言わないが」


「あんっ?!
俺に聞こえるように言ってるよね!?
素直にありがとうとか
お礼ねぇの!?」


「どーもどーも」


「武明のとこだけブレて撮ってやる」





二人の仲の悪さは
もはやビジネスコントに見えてきた。

じゃあ撮るよってことになって
主任とユウさんに挟まれて
大の大人がふざけ合って
収集が付かなくなる。





「主任って割とその…」


「アキはノリはいい奴だよ」


「いい奴って何だよ。
元からノリはいいわ」


「ふふっ。
何だかお二人の話を聞いてると
高校生に戻った気がします」





主任の愉快な一面もしれて、
青春気分を味わった気がした。


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