第11章 木陰に隠させて
「...舞衣...」
『え!? 研磨くん! 』
体育館の入口から呼ばれた名前。
自主練の場で最も見かける可能性が少ない人物が立っていたから、私は思わず声をあげてしまった。
「うわ、ここ暑っ...熱こもりすぎ...」
「研磨ァ!? 」
同じように黒尾くんも驚いた声を出す。
「おぉー! 孤爪も練習しよーぜ! ヘイヘーイ! 」
嬉しそうな声をあげる木兎くんに対して、嫌という気持ちを微塵も隠さない研磨くんの顔。
「...オレはしないよ。それより、ご飯の時間もう終わるから呼びに来た。夜っ久んにきいたら、まだ来てないかもって言ってたから...。」
『あ、ご飯の時間! 』
研磨くんに言われて、自主練開始から始めて時計を見た。
食堂が閉まるまで、あと1時間を切っている。
『ありがとう研磨くん! 』
「うん...。」
「おーし、片して飯行くぞー。」
黒尾くんが主将らしく声をかけて、みんなで後片付けをして。
研磨くんはその間、入口でゲームしてたけど。
木兎くん、赤葦くん、月島くん、黒尾くん、研磨くん、そして私。
ゾロゾロと、食堂へ向かう。
木兎くんが赤葦くんと月島くんの肩を組んで歩き出したから、私は自然と幼なじみコンビに挟まれる形になった。
...そういえば、2人とも、小さい頃からバレーをやっているわけで。
『ねぇ、黒尾くんの“バレーにハマる瞬間”はいつだったの? 』
「え、急になんですカ。」
『さっき木兎くんが言ってたから。黒尾くんにもあったのかなって。』
「あー...さっきのな。」
黒尾くんは、「いつだったかなあ」と髪をガシガシとする。
「...初めてクラブチーム行った時じゃない。」
そう言ったのは研磨くんだった。
『え、そうなの? 』
「...うん。ネット下げて、スパイクの練習させてもらって、それが初めて出来た時。」
「おまえ、よく覚えてんなぁ...。」
少し恥ずかしそうな顔で、私を挟んで黒尾くんは研磨くんを見る。
研磨くんは黒尾くんの方に顔を向けることはなく、歩きながらもゲームに夢中。