第11章 木陰に隠させて
「おやおや? 」
「おやおやおや? 」
木兎くんと黒尾くんは、2人して絡みに行く。
「ききたいことがあるんですが...いいですか。」
「「いーよー。」」
月島くん、どうしたんだろう。
たしかに練習中も、どこか身が入らないというか、全力な感じがしないのは気になっていた。
だけど別に下手なわけじゃない。
身長もあるし頭もいい。
周りから見たら恵まれているようでも、悩みがあるのかな。
真っ直ぐに主将2人を見すえて。
月島くんの口から出た言葉。
バレーはたかが部活。
どうしてそこまで頑張れるのか。
タダノブカツくんは置いといて。
成程。
たしかに。
言われてみればそうかもしれない。
私だって、中学から続けていた陸上を、高校入学と同時に辞めた。
もうこれ以上、やる意味もやっている姿も想像できなくなったから。
高校でもバレーを続けている人の中で、高校から始めた人は少ない。
少なくともうちのバレー部ではリエーフくんだけだし、それはとても珍しいことだという反応を皆にされてる。
なんでみんな、続けるんだろう。
遊ぶ時間を削って。
受験勉強の時間を割いて。
月島くんの抱く疑問。
私も感じた疑問。
その疑問に、木兎くんの言葉は刺さった。
楽しくない。それは、下手くそだから。
木兎くんは続けて、自分の話をしてくれる。
最近やっと楽しいと思ったこと。
クロスが止められて、ストレートを練習しまくったこと。
次の試合でブロックに触らせなかったこと。
バレーにハマる瞬間。
その瞬間が、あるか、ないか。
そうか。
ここにいるほとんどの人が、きっと、その瞬間があって。
だから、ここにいる。
辛くても。
夏休みを費やしても、遊ぶ時間を削っても、受験勉強の時間を割いても。
ここに来て、練習をしているんだ。
木兎くんの真っ直ぐな性格ゆえか、その飾り気も混じり気も無い言葉はすんなりと身体に入ってきて。
傍で聞いていた私も、納得してしまった。
その後月島くんは、黒尾くんと木兎くんにつかまって、また練習に付き合って。
私は昨日より軽くなった雰囲気にどこか嬉しさを感じながら、ボールをポーンと山なりにあげた。