第14章 親友からの電話
「...知ってるっつーか、なんつーか...まぁ、中学から知ってる...。」
後々、会う度に小競り合いが起きる仲だと、やっくんに教えてもらった。
『あ、ほんと? 美華の元カレなんだけど、』
「は!? そうなの!? 」
『うん。』
「マジかよ。世間は狭いなぁ。」
そうだね、なんて笑いながら。
『やっぱり黒尾くん知ってたんだね。』
「おー。まぁ、戸美も今年の主将はアイツだし? 」
『ふーん。』
「ちなみになんで別れたんですカ? 」
『んー...』
「あ、聞かない方がいい感じ? 」
『んー、や、たぶん大丈夫。美華だし。』
「仲良いんだな? 」
『高校違って3年経っても連絡取るくらいには仲良いですよ? んー...と、あ、優はバレーばっかでつまんない、って言ったって。』
「ぶはっ」
『私も笑っちゃって、笑い事じゃないって言われた。』
「はは、まぁでも、俺らが付き合っちゃうとそうなるのは必然だよなー。」
『えっ!? 』
“俺ら”って何?
「いやだから、俺とか戸美の主将とか? 夜久も海も、バレー部ならみんな。」
ああなんだ。
その“俺ら”か。
私と黒尾くんかと思って驚いた。
『...そうだね。私も、バレー部がこんなに忙しいなんて知らなかったよ。』
「バレー部だけじゃねぇけどな。」
『あはは、確かに。運動部はそういうとこ多いか。』
そんなことを話しているうちに、体育館に着く。
「はよーっす。」
『おはよーっ。』
「「ウィースッ」」
既に、1.2年生の何人かは来ていて、コートの準備をしていて。
私も練習メニューを確認してから、その輪に入る。
夏合宿が終わっても、休む暇なんかない。
こっちだって新体制だ。
リエーフくんは試合に出れるくらい研磨くんと合わせられるようになってきた。
犬岡くんはMBからWSに転向して、海からレシーブを改めて教わっている。
芝山くんも、やっくんの後任として、音駒のリベロとしての実力を磨く日々。
1年生はすっかり部で各々のポジションを確立し始めて。
トラくんは、ストレートの練習を本格的にやり始めてるし。
黒尾くんも最近の自主練は、サーブを強化する練習を始めた。
最後の春高。
最後の公式戦。
『よしっ』
私も頑張らなきゃ。
誰にも聞こえないよう、小さい声で気合を入れた。