第14章 親友からの電話
『んー...? ...あぁ! 』
夏合宿前半戦のあと。
美華に、「彼氏いないの? 」と聞かれて、黒尾くんが少し気になるかも、でもわからない、みたいなメッセージを送った。
それからテストとかで忙しくて、結局その話はうやむやになったんだった。
『黒尾くん...。』
"それだ! クロオくん! どーなったの!? "
『えぇーっ、』
私は美華に、最近の報告をする。
テスト期間にずっと一緒に勉強をしたこと。
その時に、好きだと自覚してしまったこと。
でも合宿で、春高が終わるまでは告白しないと決めたこと。
美華はたまに、「きゃー! 」とか、「ええ! それで? 」なんて大きな相槌を入れながら聞いてくれた。
"ふーん。好きなんだねえ。"
『うん。好きだよ。』
自分の気持ちを伝えるよりも、黒尾くんの頑張ってることを応援したい。
そう思えるくらいには好き。
そこからまた少し、勉強についての話や中学の時の思い出話をして。
いつの間にか、通話時間は3時間を越えていた。
『ごめん、私明日も朝練なんだ! 切るね! 』
"あ、うん! 私も遅くまでごめんね! "
『んーん、全然! じゃあまた土曜の午後にね? 』
「おっけー! 」
『後で時間連絡する! 』
"はーい、おやすみーっ"
『おやすみー』
時計を見て驚いて、慌ただしく電話を切って。
さっきまで、美華と自分の楽しそうな声が響き渡っていたのに。
しんとした部屋。
少しの寂しさと、土曜にまた会えるという嬉しさを胸に。
私は電気を消した。
明日も朝練。明日も早い。
また明日もきっと、眠そうな黒尾くんに会うんだろうな。
そう思うと、例え明日小テストが2つあっても、世界史のワーク提出があっても、学籍番号であてられる日でも、学校に行くのが少しだけ楽しみになった。