第4章 優柔と懐柔

彼の仕事は"多忙"で毎日ここに帰宅できる訳ではない。

連絡は割とこまめにくるのは彼が無事だと言う事、それだけで幸いだとは思っていた。

朝からスマホが鳴る。
時刻は六時半、登録されている人間は限られている上にこの時間だ。

「おはよう、」
『零、おはよう。どうしたの？』
「これから時間あるか？」
『あり余っているよ？』
「紹介したい人間がいる」

彼からの通話は自分から先に言葉を発さない。
彼の出方を待つのは"なんとなく"。

潜入捜査や危険が伴う仕事のため、彼の出方を先に伺う事に意味があり"彼女"もしていた事だった。

『何時頃になるの？』
「一時間後には」
『何人いるの？』
「一人連れて行く」

通話が終わり頭をフル回転させタイムテーブルを作る。
朝だと朝食を用意した方が良いかもしれない。

お米を炊きシャワーを浴びる。
テーブルに落ち着いたカラーのランチマットを二枚引いておく…十五分経過。
焼魚にはじかみ生姜、だし巻き卵と味噌汁に小鉢三個、献立が決まり早々と作り終わり…二十分経過。
髪をセットしメイクをする…十五分経過。

何事も無かったかのようにお茶の準備をはじめた頃にインターホンが鳴った。

（見事なタイムテーブルだったわ！）

は自画自賛をした。

玄関まで向い出迎えると彼と厳格な雰囲気の男性がいた。
彼の上司なら失礼があってはいけないと座礼をした。

安室は驚いた顔をしている。
慌てふためく厳格な雰囲気の男性を見る限り、上司ではないようだった。