第6章 秘めたる力
ドーベルマンも腕を組み、ナイフを高く掲げて振り下ろすその姿に眉を寄せる。
「3回目、4回目は大目に見ていたが…やはりあのタイプの"真面目"は末恐ろしい。実戦でどう出るかが楽しみだ」
「アーツの訓練はどうするのですか?ドクターからは鉱石病を避けるために彼女は省くようにと言われています」
「本人の意向に沿う。いつまでも過保護を受けるお嬢さんでいるわけにはいかないと望んでいるようだからな」
11日目にここで剣術の得手不得手が分かれる。体力のない者、力がない者も審査対象だが、大きな要因となるものは、敵を殺す感覚が手に纏わりつくことを避ける者だった。
そんなナイフをものにした者は先鋒、前衛、重装に分かれる。ナイフが扱えなかったものは遠距離担当の狙撃と術師と医療と補助に分けられる。さらにそこから個人の成りたい職業に分かれてそれぞれの適合率を計っていく。
センスが無ければ教官の指示に従い、職業を変える。そういう風にして自分が担当することになるオペレーターが決まっていった。
12日目、チュートリアル最終訓練として源石術の適性検査が行われ、訓練生のオペレーターの職業が確定する。さくらは、源石術が使えるか否かを計る杖を手にすると、その有無が一発で分かった―――その場で見ていた現役の術師でもそれは戦慄した。
「…」
水準値以上の膨大な術が逆流し、自身にかかる身体能力の向上から始まり、常に体を纏う冷気は彼女が歩く度に地面を凍らせた。
ナイフの訓練で先鋒か前衛と捉えていたドーベルマンだが、こればっかりは悩んだ。
今日は最終訓練ということでさくらの様子を見に来たドクターと顔を見合わせた彼女は、負けた気分で悔しそうな表情だ。