第23章 殺意の目
「どういうこと?」
「レイリィは自殺なんかじゃない。これは明らかな殺人だ」
「え?」
スチュワードは絵を見ているアドナキエルを引っ張り、シャワールームから出しては今度は自身が中に入って、右手の人差し指で壁を指す
「2人の会話で分かったよ。普通、自殺する人がこんな丁寧な絵を描くかな。時間がないのに」
「…言われてみればそうだね」
「僕が思うに、レイリィは部屋で何者かにこのナイフで手首を切られたんだ」
スチュワードは、腰のショルダーバッグからジッパーの付いた透明な袋を取り出す。
それは大物のナイフだった。乾いてはいるが、柄の部分まで血がついている。
「ナイフの柄にはレイリィ本人の指紋しか見つからなかったが、何らかの方法でレイリィを自殺に見せかけようと、あえて手首を切った。そして、出入り口の扉を外で押さえつけることにより、彼をこの部屋に閉じ込め、出血死で命が尽きるのを待ったんだ」
「それが、あの出入口の血の跡…」
「うん。…出られない事を悟ったレイリィは、せめて死ぬなら何か残さないとと思ったんだろうね。このシャワールームまで来て、さくらのせいじゃないことを自分の血を使って描いて見せた」