第8章 雨宿りはお好き?
梅雨の生暖かい空気と湿気は、体育終わりの生徒たちを眠りへと誘う。
「おい、…起きろ。紫色。」
それは舞とて例外では無く、現に今、数学の授業にて転寝をしていた。
青筋を立て、丸めた教科書で自身の肩をトントンと叩く不死川と未だ寝息を立て心地よさそうに眠る舞に、筍組の生徒は皆が恐れ慄き恐怖した。
(舞…きっと体育で疲れたんだな……。)
(おいおいおいおい!!!早く起きろよォォォォ!!!!)
善逸の悲痛な叫びも舞に届くはずが無く…。
「起きろっつってんだろうがァ!!!」
パァン!!と舞の頭に不死川の教科書が振り下ろされた。
容赦無いその鉄拳は、歯切れの良い音を立てて舞の頭に直撃する。
「んぎゃっ!?」
猫が尻尾を踏まれたような声をあげて飛び起きた舞は、目の前で仁王立ちをする不死川を目にして、すぅーっと血の気が引いた。
「やっとお目覚めかァ?…お前に特別補習をしてやる。放課後準備室に来い」
「ひ、は、はい……」
しどろもどろな返事を返した舞は、明日の朝日が拝めるようにそっと神様に祈るのであった。