第1章 全話共通プロローグ!
クロウリーに連れてこられたのは、蜘蛛の巣が張り、門が外れ、雑草はぼうぼうのボロ屋敷。
ヒカルの築50年ボロアパートですら、これほど酷くはなかった。
「ちょっとこれ、人が住める建物じゃないですよね!?」
「そうでしょう? 趣があっていい建物ですよね? さ、中へどうぞどうぞ。」
監督生とクロウリーの話は噛み合っていない。
中へ案内された監督生は「古すぎるのは外装だけかも」と僅かな希望を持っているようだが、甘い。
やってきた寮の談話室は、それはもう……酷い状況だった。
「じゃ、私は調べものがありますので、二人で仲良くすごしてください。それでは。」
「え……!?」
言うが早いか、クロウリーは寮から……オンボロ寮から出ていく。
「……真っ白な埃が雪景色みた~い。」
「うん、まあ、とりあえず掃除しよっか?」
「……そうだね。」
幸いにも、掃除道具は揃っていた。
箒に塵取り、バケツに雑巾を用意しながら、今さらになってしまった自己紹介を始めた。
「わたし、ヒカルっていうの、よろしくね。」
「あ、自分はユウ。こちらこそ、よろしく。」
「あのさ、ユウは女の子だよね?」
「うん。よく男に間違われるけど、生物学的には女だよ。」
やはり女子!
監督生は男装女子か!
「ユウって呼んでいいかな?」
「うん。じゃあ自分もヒカルって呼ぶよ。」
互いに年齢を明かしていないが、恐らくヒカルの方がユウより三、四つ年上のはず。
けれどそこは同じ異世界人のよしみ、固いことは言いっこなし。
「ユウはさ、誰が推しキャラなの?」
「え? 推し…キャラ……?」
「あ、ううん。ごめん、なんでもない。」
ある程度予想をしていたことだが、ヒカルとユウは同じ異世界人でも違う世界から来たようだ。
ヒカルはツイステッドワンダーランドがある現実から、ユウはツイステがない他の世界から。
それはとてつもなく大きな違いだけど、事実をユウに明かすつもりはない。
というか、他の誰にも打ち明けるつもりはない。
未来を知っているだなんて、迂闊に喋ってはいけないのだ。
なにせここは、ヴィランズだらけの世界だから。