第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
ヒカルを人質に取り、返してほしければカメラを寄越せ……というのがレオナたちの作戦だ。
迂闊にラギーを撮影したヒカルが蒔いた種とはいえ、あまりにも事件に関わりすぎている。
「まずは一晩、様子を見ようじゃねぇか。こいつが帰らず、慌てるやつらの顔を想像するだけで笑えるぜ。」
「さっすがレオナさん。考えることがえぐいッスね。」
そのセリフ、ヒカルに言わせていただきたい。
えぐい、えぐするぎる。
(推しとひとつ屋根の下で一夜を明かすなんて、えぐするぎるよーー!)
声にならない絶叫を心の中で木霊させたヒカルは、レオナの目には憐れな草食動物に見えたのだろう。
ほんの少しだけ気まずそうに目を逸らしたあと、低い美声でこう告げる。
「そんなにビビらなくても、取って食いやしねぇ。お前はしばらくの間、ウチでおとなしくしればいいだけだ。」
「……。」
「……チッ」
不機嫌に舌打ちをしたレオナは、話は終わったとばかりに席を立った。
談話室から出ていった彼を視界の端に捉えながら、ヒカルは再び震える。
「一応聞きますけど……ヒカルくん、本当に怯えてるんスか?」
「………り。」
「え、なに?」
「無理! むりむりむり! 推しと同じ空気を吸うのだって無理なのに、寝食共にとかもう無理!」
思いっきりテーブルに突っ伏したら、ご馳走がのった料理の皿がガシャンと揺れた。
そういえば、せっかくの料理もまともに口にできていない。
「違うの、違うのラギー。あなたもとっても好きなんだけど、やっぱり最推しの力には勝てないんだよ! だって、推しが推しで推しなんだもん!!」
わあッと喚き出したヒカルを見下ろしたラギーが一言。
「や、ちょっとなに言ってるかわかんないッスね。」