第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
肉と睨めっこしながら震えていたら、給仕をしていたラギーが口を挟む。
「てか、そんなことより! そろそろ本題に入ってもいいッスかねぇ?」
「ほんだい?」
感激して頭がぼーっとしていたヒカルは、ラギーが言う本題の意味がわからず問い返した。
「うわ、マジで忘れたんスか? カメラのことッスよ、カメラ! さっさとオレらに渡してくださいッス!」
「あ、あー、カメラね。」
「え、うそ、本気で忘れてたでしょ。」
忘れていたわけじゃないけれど、レオナと食事をしたせいでいろんなことが吹っ飛んでいた。
これではラギーが可哀想なので、正直に告白してあげよう。
「カメラ、ないよ。」
「は?」
「あのカメラは元々ユウのもので、返しちゃったから今は持ってないの。」
現在はリドルたちの手にあることは、言わなかった。
さすがにそこまで漏らすのはユウへの裏切りのような気がするし、今喋った情報でも嘘はついていないから。
「なんだよそれ! 完全に無駄足じゃないッスか!」
「ごめんねー。」
必要ない接待をさせてしまって申し訳ないが、ヒカルが口にしたのはパンひとつだけなので、どうにか見逃してもらいたい。
「レオナさん、どうします? オレ、今からオンボロ寮に忍び込みに行きましょうか。」
「馬鹿か、お前。こいつの前で手の内を明かすんじゃねぇよ。」
ごもっともです。
ヒカルの住まいはオンボロ寮で、同じ異世界人のユウとは仲が良い。
いくら余計な手出しをしまいと思っていても、傍目から見たら立派なユウの仲間。
そろそろ帰りたいなと思っていたヒカルをじっと見つめたレオナが、悪人の顔をしてにやりと笑う。
「ああ、そうだ。いいことを思いついた。」
その顔はよく知っている。
レオナがろくでもない策を巡らせた時のもので、嫌な予感しかしない。
「こいつを餌にして、やつらを釣り上げるか。」
「え……。」
「あー、なるほど。シシシ、そりゃいいッスねぇ。」
「え……。」
要約すると、ヒカルは人質になったわけだ。