第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
立ち上がったアズールを見上げたヒカルの瞳が、きょとんと瞬く。
その顔は疑問に満ちていたが、疑問だらけなのはアズールだって同じ。
「なにを驚いているんですか! 帰すわけないでしょう!」
「あ、うん。……いや、うーんと、なんで?」
それは単純な質問で、しかし、アズールにとっては確信を突く質問。
ここで怖気づいては男が廃る。
曖昧だったにせよ、一度は「好き」と応えたのだから、迷いはなかった。
「だ、だから! ヒカルさんが好きだと言ったでしょう!」
一世一代の告白は、完璧だと思われた。
だが、実際には落第点中の落第点で、戸惑うヒカルには一切伝わらなかった。
「それは、まあ、言われたけど……。好きな人にちょっと気に入られてるからってこの世界に残れるほど馬鹿じゃないし、他の人と付き合っているのをずっと見ていられるほど図太くもないっていうか……。」
「ちょっと気に入られている!?」
ふざけるな、アズールの想いはその程度で済まされるものじゃない。
一服盛って、陸上では生きられない身体にしてやろうと企むくらい、ヒカルが好きだ。
「ごめん、いきなりこんなことを言われたら驚くよね。だから、アズールくんがユウと付き合ってから打ち明けるつもりだったんだけど……。」
ものすごく単純なことだが、ヒカルは勘違いをしている。
彼女は今でもアズールがユウを好きだと思っており、それゆえにアズールが「好き」と言っても伝わらない。
しかし、それは当然だ。
彼女はずっと、アズールの片恋を応援してきた立場なのだから。
少し冷静になってみると、事の次第が脳内にじわじわと侵食してきた。
もし……、もし、ヒカルがアズールを異性として好きなのであれば、彼女はなぜアズールに協力したのか。
簡単だ。
アズールが頼み込んだせい。
好きな男から自分ではない誰かとの恋を応援するよう頼まれ、それを実行する羽目になったヒカルの心は、どれほど傷ついただろう。
アズールには、絶対に真似できそうにない。
そんなのは、ただの拷問だ。
拷問に近い苦行を、アズールは彼女に強いてきたのだろうか。