第4章 おいらの気持ち
「いってきまーす」
「ありがとうございました」
「いいのよ!またいらっしゃい❤️」
「いってらっしゃい」
もー、母ちゃん調子に乗りやがって…
扉を開けると、にのがすごい顔をした。
まぁそりゃ驚くよな…
「なんで、2人一緒なの?」
「いろいろあってさ…」
やましいことはないけど、なんだか恥ずかしくて、適当に誤魔化しちゃった。
「二人で学校行ってんだね。」
「うん。家近いから。」
始めこそ2人の間に壁があったはずなのに、
「はははっ、翔ちゃんの前で智そんなことしたの?!」
「そうなんだよ!まじ可愛いだろ?にのにも見せてやりたかったよ。」
「…………。」
俺、置いてけぼりなんだけど…
よほど気が合ったのか、もう名前で呼び合っている。
駅について、電車に乗ろうとしたら、何やらイベントがあるとかで、すごい人が多かった。
扉が開いた瞬間、我先にとみんなが押し進んでいく。
人の波に押されてなんとか乗れたものの…
身動きなんてとてもじゃないけどできない状態だ。
もぞもぞ。
んっ?お尻触られてる?
にのったら、こんな狭いとこで…
身動きが取れずに固まっていると
手がどんどん前の方へと流れてくる。
えっ?にのじゃない…
後ろから出てきた手は真っ白で可愛いものではなかった。
ど、どうしよう。これって、痴漢?
誰か、誰か助けて…
にのじゃないと分かった瞬間、急に怖くなったおいらは、
抵抗の声も出せずにただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
その時、
ぎゅっ。
前の人と人の間から出てきた手に腕を掴まれ、グッと引っ張られた。
あまりの力に、引っ張った人に抱きしめられる体制になったが、
狭すぎて離れることができず、
謝ろうと顔をあげたら、
「しょ、翔くん…」
「智くん大丈夫?」
心配そうに垂れ下がったアーモンドのようなお目目が俺を見つめていた。
その後も、学校の最寄駅に着くまでずっと守るように抱きしめられていた。
その胸がすごくあったかくて、
おいらはこの胸に、
いや、
この人に守られたい
そう思った。