第27章 【それぞれのクリスマス】
翌朝、クリスが目を覚ますとベッド際に沢山のクリスマス・プレゼントが届いていた。
ハリーからは本革のブックカバー。ロンからは大きな箱入りの百味ビーンズ。ハーマイオニーからはお手製の宿題計画帳。
それからウィーズリーおじさんとおばさんからは、手編みのセーターとミンスパイ。
ルーピン先生からは花の模様をあしらった木彫りのペン立て。そして最後にシリウスから、巨大な黒い犬のぬいぐるみが届いた。
ご丁寧にメッセージカードに『これから寝る時は、このぬいぐるみを私だと思ってくれ』と書いてある。この歳になってまでぬいぐるみを――しかも無駄に巨大な――をプレゼントされるとは思わなかった。
クリスが着替えを済ませ、食堂に行こうとしたら、ハリーとロンの寝室の扉から声が聞こえてきた。
折角だからクリスマスの挨拶をしようと部屋を訪ねると、そこにはフレッドとジョージがいて、4人とも神妙な顔をしていた。
「メリー・クリスマス……って雰囲気じゃないな」
「やあクリス。メリー・クリスマス」
「悪いけど朝食はちょっと待ってくれよ。ママが泣いていてそれどころじゃない」
クリスは一瞬、ウィーズリーおじさんに何かあったのかと心配になった。
しかし予想は外れた。どうやらパーシーがクリスマス・セーターを送り返してきたらしい。それも手紙の1つもなしにだ。
それを聞いて、クリスはどういう顔をすれば良いか分からなかった。
クリス自身、クラウスの生前は決して親孝行な娘とは言えなかった。そもそもクラウスが仕事を理由に家を空けることが多くて、一緒に過ごした時間はそう多くない。
だが今でも父親はクラウスただ1人だと思っているし、出来る事ならもっと多くの時間を共に過ごせば良かったと後悔している。
パーシーがいつかクリスと同じ苦しみを味合わないよう、目を覚ましてくれることを祈るしかない。
頃合いを見て食堂に降りて行くと、おばさんは赤くなった目をごまかす様に、いつもより3割増しで笑顔で挨拶をした。
「メリー・クリスマス。みんな揃ったようね」
食堂には他にもハーマイオニーとジニー、それにルーピン先生とシリウスがいた。
クリスは昨夜の事を思い出し、ついシリウスの方に目をやってしまったが、シリウスは至って平然としていた。