第22章 【パンドラの箱】
時間だけが無情に過ぎ、やがて夜の帳のが降りる頃、『太った婦人』の肖像画が開き、のそっとロンが姿を見せた。
この寒さの中、ずっと外にいたのだろうか。頬も鼻の頭も真っ赤にかじかんでいた。
「ロン、どこにいたんだ?」
「歩いてた……ずっと……」
「震えてるじゃない!こっちよ、暖炉に当たって!!」
ハーマイオニーが暖炉の前で手招きしたが、ロンは放心状態でフラフラと暖炉のそばに来ると、明らかにハリーと距離を置いた場所に膝を抱え込むようにして座った。
そして膝を抱えたまま、ロンが小さな声で呟いた。
「ごめん……僕のせいだ」
「何が?」
「僕がチームに入ったから……僕、明日の朝一番にマクゴナガル先生の所に行って、チームを抜けるように言うよ」
「そんな事をしたら、チームには3人しかいなくなる」
「どういう事?」
「マルフォイを殴った罰として、クィディッチ禁止になった。ジョージとフレッドもだ」
これには流石のロンも絶句した。痛いほどの沈黙と、絶望が談話室全体を包む。
やおらアンジェリーナが立ち上がり、まるで大きな岩でも肩に乗せているんじゃないかと言うほど落胆した様子で女子寮への階段の前で立ち止まった。
「私、もう寝るわ。チームの事は、また今度話し合いましょう。今夜は……もう何も考えたくないの」
それだけ言うと、ゆっくり女子寮の階段を昇って行った。それに続くように、1人、また1人と各々の寮へと消えていく。
最後に取り残されたのはハリーとロン、クリスとハーマイオニーの4人だった。毒のような黒い、気まずい雰囲気が、それぞれの体を蝕み絶望の淵へと追いやる。
と、不意にハーマイオニーが立ち上がり、窓の外を見た。曇ったガラスを指でこすり、目を凝らすと仄かに顔を輝かせた。
「ねえ、パンドラの箱って知ってる?絶望の最後に希望が見つかるっていう」
「つまり、何が言いたいの?」
「あのね――ハグリッドの小屋に、明かりがついているの」