第12章 拾弐ノ型.焦がれる
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「そうか、そんな事が...」
自室に着いた煉獄は、千寿郎から事の顛末を聞いて俯く。
しかしその表情は何処か嬉しげで。
煉獄の表情を見て、千寿郎もまた笑みを深くした。
、床に腰を下ろした煉獄の横に、千寿郎もまたちょこんと座る。
「兄上、炭治郎さんから兄上の言葉を聞きました。温かい強い言葉を。最後の時、俺が迷わなくても良いようにああ言ってくれたんですね。」
そっとはきだされた千寿郎の言葉に顔を上げた煉獄。
千寿郎は涙を零しながら、しっかりと兄の手を握る。
「俺、剣士になるのは諦めます。それ以外の形で人の役に立てる事をします。炎柱の継承は絶たれ長い歴史に傷がつきますが、それが俺の進む道です兄上。」
吹っ切れたように、そして少しだけ申し訳なさそうに言う千寿郎に煉獄は言う。
まだ幼い己の弟の背を押してやるために。
「それがお前の生きる道なら、胸を張って生きろ千寿郎。」
言って未だ泣き続ける千寿郎の頭を撫でる。
感じる兄の手の温かさに、千寿郎は更に涙を零し兄の大きな背中に腕を回した。
「大丈夫だ、何も心配することは無い。お前には兄がいる。兄は弟を信じている。心のままに生きるんだ。」
いつかかけられた言葉とそっくりそのままな、
眩しい程に心強い兄の言葉。
「はい、はい...兄上...」
微笑んだ煉獄に千寿郎は縋り付き、暫くその小さな嗚咽を零し続けた。