第264章 福袋
「孝志?久しぶりやね♪
まだ独り身なん?」
正月休み、何年かぶりに帰った実家。
地元のデパートで懐かしい顔に声を掛けられた。
「…佐恵子か?
いきなりなんや?、お前だってまだ独りやろっ」
幼なじみの佐恵子がそこにいた。
「ところで何してん?」
「何って、ここにいるんや福袋買いに来たに決まっとるやろ」
「狙いは一緒って事?」
どうやら佐恵子も同じ福袋を狙っている様だ。
「またお前と争うんか?」
「孝志が相手なら、また私の勝ちやね」
そう、あれは15年前。
高校最後の正月、俺と佐恵子は数量限定福袋を目指し争った。
結果は最後の一つを佐恵子に奪われてしまった。
「今年はリベンジしたる!」
デパート開店と同時に大勢の客が目当ての福袋へと我先にとなだれ込む。
「どけぇおらぁ!」
「はぁ…」
三十路になってもやっぱり性格は変わってないのか…。
佐恵子は目的の為なら手段を選ばないと言うか人が変わると言うか。
あれがなきゃ良い女なのに…。
「ってか!待たんかぁ!」
俺は人混みを掻き分け限定福袋に手を伸ばした。
後…、後ちょっと…。
「貰ったぁ!」
指先が触れた福袋は、すぐにその感触がなくなった。
最後の一つは、見事に取られた。
「やっぱり私の勝ちね!」
佐恵子が勝ち誇った様に福袋を掲げた。
「私に勝とうなんて100年早いわ」
帰り道、佐恵子は福袋を見せびらかせながら笑った。
「来年また帰ってきたらリベンジしたる」
「あら?約束忘れたの?」
「ん?約束?」
「二連敗したら私の旦那になるって!」
「なっ!」
…お、思い出した。
15年前のあの時…。
end