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千分の一話噺

第119章 天才


「パンダのマネキンだぁ?
そんなもんどこで使うんだぁ!」

開店前なのに俺が怒鳴った相手は、一応この店のオーナー兼デザイナーの幼なじみだ。
その天才的なデザインセンスはファッション業界で一目置かれる有名人。
俺はと言うと、一応この店の雇われ店長になる。

「でも~、ほら最近パンダが妊娠したとかニュースになってるし、パンダって可愛いじゃない」

まだ言うか?このアホオーナーは…。
「だいたいパンダのマネキンなんて何処に売ってるんだぁ!」
更に怒鳴るもコイツはどこ吹く風の様に何かを紙に描き出した。

「うん、こんな感じ♪」

コイツがさっと描いたイラストは、春らしい服のデザイン画だが、顔がパンダだった。
「人の話を聞け!
パンダに服着せてどうする!」
俺の苛立ちは頂点に達していた。

「あ~っ怒ってる?
でもね、今度の新作はなんかパンダのイメージなのだ」

パンダのイメージって何なんだ?
天才の考える事は俺には理解出来ない。
「…はぁ…ったくよぅ…そこまで言うなら、余興とかで使うパンダのマスクをマネキンに被せれば良いのか?」
俺が何言っても、一度言い出したら梃(てこ)でも曲げない頑固さは誰に似たんだか?…。

「さすがぁ!
じゃあパンダのマスク買ってきてね♪」

そう言うと笑顔で俺に財布を投げてよこした。
「今かよっ!」
俺の言葉も聞かずアイツは早くもマネキンに新作の服を着せはじめている。

あんな輝いてる笑顔見せられたら何にも言えないだろ。
コイツは人使いも天才的だ。



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