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千分の一話噺

第118章 墓参り


春のお彼岸である。
春分の日の前後三日間、この期間にお墓参りするのは日本特有の風習だ。
更に日本の中でも地方によって微妙に違うのはお約束と言っていい。


私の家でも何かと問題が起こる。

お彼岸にお墓参りに行くのは変わらないが問題はお供えに何を持って行くのか?なのだ。

一般的に春は牡丹餅、秋はお萩が定番なのだが、何故かうちは春は桜餅をお供えする。(季節的に春は春らしい桜餅の方が合うから変わったのだと思う)

しかし、桜餅には関東の「長命寺」と関西の「道明寺」の2種類があって、これが毎年我が家の問題の種になっている。
母は関東育ちなので長命寺なのだが、父は関西育ちなので道明寺なのだ。

「桜餅ゆうたら道明寺やろ
あんなクレープみたいな桜餅よう食わんわ!」
「何言ってるのよ!
桜餅は長命寺に決まってるでしょ!
牡丹餅をひっくり返したような桜餅なんて嫌よ!」

何が楽しいのか毎年この議論になる。
私はどちらも美味しいからどっちでも良い。
まぁなんやかんや言っても婿養子の父が負けるのは端から分かってはいるのだけれど、自己主張はしたいようだ。

「うっ…ら、来年は俺の実家の墓参りに行く!」

これも毎年の決まり文句になっているが、行った例しがない。
父の実家へ行くのはお盆の時だけ。
でも母もちゃんと両方買ってくるんだから、これが夫婦円満の秘訣なのかもね。



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